藤崎駐米大使によるオバマ大統領就任式典への出席
(藤崎大使所感)
1月20日の大統領就任式当日、気温は摂氏零下7度くらいとかなり寒い朝でした。幸い雨も雪も降らず一部に青空が見えました。午前11時半からの就任式典に先立ち、各国大使は午前8時に会場から少し離れた国務省に集合し、何台かのバスに分乗して、オバマ大統領がスピーチをする連邦議会の壇上を取り巻く階段席に参りました。大統領と同じ段には大統領の家族、上院議員などが座り、まわりの階段席に下院議員、外交団らが座りました。階段席からは議会からリンカーン記念堂までの3kmを埋め尽くす二百万の人達の姿も一望できました。

午前11時半から就任式典が始まると、報道のとおり、オバマ新大統領がリンカーン大統領がかつて使った聖書に手をおいて宣誓した後、演説しました。期待が高かった演説ですが、選挙のときと異なり盛り上げを狙わずトーンを抑えた指導者らしいものにしたというのが、各国大使やアメリカ人の友人の感想でした。

オバマ大統領のメッセージは一言でいえば、今アメリカは困難に直面しているが、建国以来これまでもさまざまな困難を乗り越えてきた、これは皆が責任感をもってリスクをとってきたからだ、これからも一緒にやっていこう、というものでした。私の造語ですが、これまで言われたミーイズム(me-ism)でなくウィーズム(we-ism)と言えるかもしれません。
その後、大統領や連邦議員達は、議会に残って昼食会を行いましたが、私ども大使は大統領の迎賓館であるブレア・ハウスに参りました。そこで軽食を供されオルブライト元国務長官など民主党の外交関係の人達と懇談しました。
夜はユニオン駅で行われた社交の集まりに行きました。十にのぼる集まりをオバマ大統領、バイデン副大統領が次々回るのです。ユニオン駅にはバイデン夫妻は11時半過ぎ、オバマ夫妻は12時半過ぎに姿を現しました。バイデン副大統領は各国大使達の集まっている部屋に来て、これから一緒にやっていこうと呼びかけました。オバマ大統領は簡潔なスピーチをしましたが、選挙戦のとき同様、熱のこもった調子で皆で困難を乗り越えて行こうと呼びかけ、1曲夫妻で踊り皆を沸かせました。
今アメリカの人達は、大変な期待をこの新大統領にかけているようです。私が聞いた何人かの米テレビのキャスターも、期待の大きさはケネディ大統領のときを上回ると言っていました。荘厳な式典、明るい楽しいパレード、集まりの組み合わせは実にアメリカらしいと思いました。
当地の各国外交使節団は、米国が歴史の新たな一頁をめくったと確信しております。我々外交団はアメリカ人の友人をお祝いの言葉を述べるだけでなく、歴史的瞬間に各国の代表として米国にいられることを喜び合いました。
平成21年1月21日
駐米大使 藤崎一郎
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