税について
令和3年8月6日
米国内に居住されている日本人の方々に対する日本の税法の適用について
所得税
(1)一般論米国内に居住されている日本人の方の場合、その居住期間(または居住予定期間)が1年以上であれば、一般的には日本の所得税法上の「非居住者」に該当しますので、以下の「(2)日本の国内源泉所得を有する方」に該当する場合を除き、日本の所得税の納税義務はありません。
他方、日本から米国へ来た方で、米国滞在(予定)期間が1年未満で再び日本へ帰国される方は、一般的には米国滞在期間中も含めて日本の「居住者」に該当し、米国で得た所得も含めて日本の所得税の納税義務があります。
(2)日本の国内源泉所得を有する方
日本の非居住者であっても、日本の国内源泉所得を有する方は、その国内源泉所得のみが日本の課税対象とされます。
日本の国内源泉所得とは、文字通り、所得の源泉が日本国内にあるもので、日本の国内での勤務に対する給与、日本国内にある不動産の賃貸料、日本国内にある土地等の譲渡の対価、日本の内国法人から受ける配当などが含まれます。ただし、日本の内国法人の役員の方(使用人兼務役員を除きます。)については、国外での勤務に対する報酬であっても原則として日本の国内源泉所得とされますので、ご留意ください。
納税方法については、これら国内源泉所得の支払者が行なう所得税の源泉徴収により完結する場合と、自分自身で日本国内の税務署に申告・納税を行なう必要がある場合があります。後者の場合は、日本国内での納税手続きを代理させるため、納税管理人を届け出る必要もあります。
相続税・贈与税
(1)一般論米国内に居住されている日本人の方が相続または贈与により財産を取得した場合、以下の「(2)無制限納税義務者」に該当する場合を除き、日本国内に所在する財産のみが日本の相続税・贈与税の課税対象とされます。
日本国内に所在する財産には、日本国内にある不動産の他、日本国内の金融機関に対する預貯金、日本の内国法人の株式、日本国政府が発行する国債などが含まれます。
相続税・贈与税のいずれについても、自分自身で日本国内の税務署に申告・納税を行なう必要があり、また、日本国内での納税手続きを代理させるため、納税管理人を届け出る必要もあります。
(2)無制限納税義務者
無制限納税義務者とは、取得財産の所在場所(日本国内、日本国外)のいかんを問わずその取得財産の全部について日本の納税義務を有する者をいい、日本国内に住所を有する者の他、次の者が含まれます。
- 留学生
学術・技芸の習得のために米国に留学している方で、かつ日本国内にいる者の扶養親族となっている方。 - 非居住無制限納税義務者
米国に居住されている方でも、日本国籍を有し、かつ自分自身または被相続人(贈与の場合は贈与者)が被相続人の死亡日(贈与の場合は贈与日)から過去前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある方。
外国税額控除制度
米国居住者の場合、米国のみならず全世界所得が連邦所得税の課税対象となり、日本の国内源泉所得については日本の所得税の課税対象ともなるため二重課税が生じます。逆に、日本居住者の場合は、米国源泉所得について日米双方の課税を受けることになります。同様に、相続または贈与により取得した財産についても、日本の相続税・贈与税と米国の連邦遺産税・贈与税の双方の課税対象となる場合があります。
このような二重課税を回避するため、日米両国は外国税額控除制度を設けており、居住地国での課税に際しては相手国で課された税額の全額または一部控除が認められます。
国外転出時課税制度の創設について
- 国外転出時課税制度
平成27年(2015年)7月1日以後、日本の居住者が国外転出(日本国内に住所および居所を有しないこととなること)をする時において1億円以上の対象資産(有価証券等)を所有等している場合には、その対象資産の含み益に日本の所得税および復興特別所得税が課税されます。 - 国外転出時課税制度(贈与・相続)
また、1億円以上の対象資産を所有等している日本の居住者(贈与者、被相続人等)から、贈与、相続または遺贈により、日本の非居住者(受贈者、相続人等)へその対象資産の一部または全部の移転があった場合にも、その移転があった対象資産の含み益に日本の所得税および復興特別所得税が課税されます。
- 申告手続き等
「国外転出時課税制度の対象となる方」および「国外転出時課税制度(贈与)の対象となる方(=贈与者)」は、日本の所得税および復興特別所得税の確定申告書の提出および納税を行う必要があります。 また、「国外転出時課税制度(相続)の対象となる方(=被相続人等)」の相続人等は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に、被相続人等に係る日本の所得税および復興特別所得税の(準)確定申告書の提出および納税を行う必要があります。 なお、納税管理人の届出など一定の手続きを行うことで、納税猶予や税額を減額するなどの措置を受けることもできます。
日米租税条約による米国での納税義務の減免
日本の居住者が米国内で得る所得(米国内源泉所得)の一部については、日米租税条約により米国の連邦所得税が減免されます。個人の方であれば、例えば、米国滞在中に得た次のような所得については、連邦所得税が免除されます。
- 出張者(短期滞在者)
日本の企業から給与の支払いを受けている日本の居住者(当該給与が勤務先の米国内支店等により負担されるものでない場合に限ります)が、米国で短期間の勤務を行った場合の当該米国勤務に対する給与。この場合の短期間とは、その課税年度において開始または終了するいずれの12か月の期間においても、報酬の受領者が米国に滞在する期間が合計183日を超えないことを要します。 - 留学生
教育または訓練を受けることを主たる目的として米国に滞在する学生または事業修習者であって、日本の居住者または米国滞在の直前まで日本の居住者であった者が、その生計、教育または訓練のために受け取る給付(米国外から支払われる給付に限ります)。なお、免税期間について、学生の場合は無期限ですが、事業修習者の場合は米国での最初の訓練開始日から最大1年です。
関連情報リンク
- 国税庁ホームページ(日本の国税について)
- タックスアンサー(税金相談)コーナー(国税庁):申告書・届出書等の諸様式ダウンロード、個別の電話相談等
- 国外転出時課税制度
- IRSホームページ(米国の連邦税について)