子の親権・連れ去り/家庭内暴力(DV)問題について

令和6年7月9日

ハーグ条約(子の親権・連れ去り問題)について

近年、海外での結婚生活等における困難に直面し、いずれかの親が、もう一方の親の同意なしに子どもを母国に連れ去るケースが発生しています。こうしたケースは、ハーグ条約や居住地の法律に反し、問題となる可能性がありますので、適切な機関・専門家等へのご相談をご検討ください。

 
Q.ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)とは、どのような条約ですか?

A. 2013年の第183回通常国会において、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)の締結が承認され、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(条約実施法)が成立しました。 これを受け、2014年1月24日、我が国は、条約の署名、締結、公布に係る閣議決定を行うとともに、条約に署名を行った上で、オランダ外務省に受諾書を寄託しました。この結果、我が国においては、ハーグ条約は同年4月1日に発効しました。

 

この条約の締約国は、他の締約国に不法に子を連れ去られたとの監護権者からの申立てを受けて、子が元々居住していた国に迅速に返還されるよう措置をとる義務を負います。親権をめぐる父母間の争い等は、子の返還後に、子が元々居住していた国の裁判所において決着することが想定されます。

 

上記のとおり、この条約は、一方の親の同意を得ない等、不法に連れ去られた子の返還について定めるものなので、子の居住していた国の法律や手続きに従って日本に連れてきた子は、この条約の対象とはなりません。詳細は以下のサイトをご参照ください。

 
Q.米国では何が問題なのですか?

A.米国の国内法(刑法)では、父母のいずれもが親権(監護権)を有する場合、または離婚後も子どもの親権を共同で有する場合、一方の親が他方の親の同意を得ずに子どもを連れ去る行為は重大な犯罪(実子誘拐罪)とされています*。

 

例えば、米国に住んでいる日本人の親が、他方の親の同意を得ないで子どもを日本に一方的に連れて帰ると、たとえ実の親であっても米国の刑法に違反することとなり、再渡米した際に犯罪被疑者として逮捕される場合があり得ますし、実際に逮捕されたケースがあります。また、ICPO(国際刑事警察機構)を通じて誘拐犯として国際手配される事案も生じています。

 

子どもを日本に連れて帰る際には、こうした事情にも注意する必要があります。具体的な事案については、適切な相談機関・団体または専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

 

*16歳未満の子の連れ去りの場合、罰金もしくは3年以下の禁錮刑またはその併科を規定(連邦法Title 18, Chapter 55, Section 1204)。州法により別途規定がある場合もあります。

未成年の子に係る日本国旅券の発給申請について

未成年の子に係る日本国旅券の発給申請については、親権者である両親のいずれか一方の申請書裏面「法定代理人署名」欄への署名により手続きを行っています。


ただし、旅券申請に際し、もう一方の親権者から子の旅券申請に同意しない旨の意思表示があらかじめ在外公館に対してなされているときは、通常、旅券の発給は、当該申請が両親の合意によるものとなったことが確認されてからとなります。その確認のため、在外公館では、子の旅券申請についてあらかじめ不同意の意思表示を行っていた側の親権者に対し、同人が作成(自署)した「旅券申請同意書」(書式自由)の提出をお願いしています。


また、米国においては、父母の双方が親権を有する場合に、一方の親権者が、子を他方の親権者の同意を得ずに国外に連れ出すことは刑罰の対象となる可能性があります。実際に、居住していた国への再入国に際し、子を誘拐した犯罪被疑者として逮捕されたり、ICPO(国際刑事警察機構)を通じて国際手配される事案も生じており、当館では、在留邦人の皆様がこのような不利益を被ることを予防する観点から、子の旅券申請の際には、他方の親権者の不同意の意思表示がない場合であっても、旅券申請に関する両親権者の同意の有無を口頭にて確認させて頂いておりますので、あらかじめご承知ください。


家庭内暴力(DV)について

米国には、家庭内暴力(DV)を含め、家庭の問題に対応する相談機関・団体が多くあり、シェルター、カウンセリング、弁護士の紹介や法律相談、法的援護活動、生活困窮者に対する救済金申請支援および育児支援等の一連の情報提供を可能としています。